小山田二郎展がすごい
地味に素敵なキュレーションで知られる府中市美術館で、また最高な展示を見た。
小山田二郎展。
最初に彼の作品を見たのは、何かの企画展の時に小部屋に展示されていたものだった。ゆめにっきに出てくるような鳥女の異様な絵に、すぐにノックアウトされて検索したりもしたけれど、画集も出ていないようであまり詳しいことはわからなかった。
小さな部屋に八枚くらいの展示だったけれど、その少し暗い部屋の感じと共にとても印象に残っている。
それが、企画展。
全部小山田二郎。
しかも会期中、大幅な入れ替えをして二期にて実施。
すごい。府中市美術館。
ひっかき傷のような荒々しい線のある、神経症的な画面はフランシス・ベーコンを思わせる。
一方で幻想的な生き物がたくさん出てきたりする絵はどこかコミカルでもある。
迫力があるのに、力が抜けている。鑑賞者にぶつかってくる異様さはあるのに、「これでどうだ」的な感じがしない。
たぶん、幻想系の海外の画家の影響とかもあるのだろうけれど、図録でも特に解説等されておらず、なんだかぽつんと彼一人の作品が投げ出されているような印象を受ける。
今回、作者の経歴を初めて知った。
彼は中年の時期に、娘と妻を残して出奔している。老年期のキャプションは、彼が新しい家族を得てそれを大事にしていた旨が書かれていたけれど、唐突に父の消えた家庭で、娘や妻は何を思っていたんだろう。
「新しい家族と穏やかな時間」を過ごせてよかったね、とはとても思えない。
ごろりと投げ出された不快感。
細かな点は語られていないから、文脈がよくわからない。
ただ投げ出されてそこにある。