きがくるわないようにする

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選べると選べないの間(『アドラー 人生を生き抜く心理学 』)

アドラーの思想は、おおまかに言えば目的論である。

あの人のルーズな性格が嫌だから付き合わなかった、のではなく、
付き合いたくなかった→だからルーズな性格だという理由をあとから付けた、と考える。


この考え方のいいところは、人間の意志を最大限評価しているところだろう。
人は自分が自分の意志で行動でき、道を選べるという感覚を持っている時、幸福を感じるという。
意に沿わないことをしてきたが、それはもともと自分が意志をしてきた結果なのだ、という認識は、自己啓発的なやる気に繋がる。

実際、例えば「海外旅行に行くことが羨ましい」と言いながらも、行けばいいのにと言っても行かない人がいたりする。その人は、本当は面倒やお金のことを考えたら、「そこまで行きたくない」と考えているわけだったりする。
この考え方で解決できる場面は多いし、「幸福な人生」というものを考える上で非常に示唆的であると思う。
どのような振る舞いができるのか、ではなく「どうしたいのか」から考える。
人生は、選べる。


ただし、意志に沿わない行動というのは有りないのか?という素朴な疑問は残る。また、意志と言っても一枚岩ではないはずで、あまりに単純な考え方にも思える。
結局のところ人に意志なんてないのでは、という気もする。


選べると、そもそも意志なんてない、の間ぐらい。
たとえば旅行に行くことは選べる。

だけど、人を好きになることは「好きになりたかった」意志の結果とは限らない。それらも結局は、ライフヒストリーに回収されるのだとしても、選べると選べないの間を往復しながら生きているような気がする。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

 
アドラー 人生を生き抜く心理学 (NHKブックス)

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