2013年の記録
- 本
1 ギヴァー
平穏な生活が綻んで世界の膜がめくれ、本当の姿が明らかになる様が圧巻。世界の外へ駆け抜ける疾走感も良い。こういう構造、ストーリーの小説が本当に好きなので、出会えたことが嬉しい。
2 しろいろの街の、その骨の体温の
これも狭いニュータウンの狭い世界を変え、そこから歩き出す話。中学・高校時代の閉塞感がこれでもかと描写されて、変な声が出そうになる。ていうか出た。呻き泣いた。賢くも愚かでもなく輝かしい普通の男の子が愛しい。
3 メモワール
写真と表現者のずるさと、たぶん愛なく成立していた、愛に見える関係について。たぶん「これも愛だ」と表する人もいるのだろうが、もっと手触りの温度がない。恋愛感情は死んでいる。それでも二人でい続けたことの末路。
夫婦関係の描写では『K』も印象的だった。写真家のずるさについては『キャパの十字架』も。
4 トラウマ恋愛映画入門
これに載っている映画は何年かかってでも全部見たい。今年は隣の女、ことの終わり、愛のコリーダなどを見たけれどどれも愛の極北が高いクオリティで描かれていて良かった。
- 映画(劇場で見たもの中心)
今更な名作映画なのだけれど、紀伊国屋シアターで初めて見た。現代日本で普通に生活していたら触れられない世界というか、こういうものに出会うことこそ映画の喜び!と思う。見終わって急いでサントラを借りた。
陽気な音楽とむごい個人の終わり、国の歴史。
これはDVDで見たのだけれど、挙げざるをえない。高校生の頃に「リリィ・シュシュのすべて」を見て刺さって抜けなくなったように、今の私にはこの映画が刺さって抜けない。
3 クロニクル
切なくて面白くて萌えて燃える。とても良い意味でマンガ的な世界がきちんと映画になっていて、この映画や世界観全体に惚れ惚れする。大好きです!!
4 モンスター・ユニバーシティ
こんな完璧なアニメが作られてしまっていて良いのか、と逆におろおろしてしまう。ピクサーこわい。はじめから終わりまで完全で隙がない。キャラが立っていて笑えて泣けて熱くて、人生そのものの悲哀みたいなものさえある。どうしろと。
5 危険なプロット
テーマが魅力的だったり、尖っていて刺さったり、という作品も良いけれど、結局、色んなバランスが良くてクオリティが圧倒的に高い作品には適わないところもある。と、この映画を見て思わされた。良いなと思える邦画もたくさんあったのだけれど、ベスト映画という切り口だとやっぱりこっちを選んでしまう。
テンポよし、映像よし、脚本よし、俳優よし。魔性の美少年ここにあり。
- アート
1 限局性激痛 ハラ・ミュージアムアーク
映画や小説の一番残酷なシーンだけ抜き出したような語りと、静かな情景の写真が並ぶ展示。「個人的な辛さ」が世界のすべてになりうるのだと、風景を塗り替えてしまうのだと、理屈でなく染みていった。どうしても見通せずに、中断して出て目にうつった、中庭の緑を忘れられない。
2 国立民族学博物館(常設)
常設だけど衝撃的だったので。見ても見てもあふれんばかりの、武器や布や人形たち! グロテスクで生々しくて、しかもそれらが「作品」でなくて生活に密着した物であるということに胸打たれる。「奇抜なもの作ってやろう!」なんていう自我のわめき声がなくて、生活者にとって必要なもので、そしてそれがびっくりするほど輝かしい。凄い。
3 ベーコン展 国立近代美術館
ベーコンの絵を大学の授業で見せられて、とても衝撃を受けたことを覚えている。叫ぶ教皇の絵だった。生で見ないと絶対にわからない、なんて思わないけれど、三幅対が実際に3枚並んでいるものの前に立つときの、自動的に湧き上がるような敬虔さのような気持ちが新鮮だった。この機会に『肉への慈悲』を読んだり、学芸員の保坂氏の講演を聞いたのも面白かった。
アートにちょっと食傷気味で(だいたいMOTのせい)、しばらくぶりに美術館へ行って圧倒された。サイバネティクスというか、80年代くらいの雰囲気というか、飴屋さんぽくもあり、シュヴァンクマイエルっぽくもあり。模造ペニスを一体何本見たことか。最後に宗教的とも感じられる世界に逝ってしまうのも何だか自然。
5 這個世界會好嗎?-向京在台北 台北現代美術館(http://www.mocataipei.org.tw/blog/post/28607848)
期待していなかったのだけれど、びっくりするほど良かった。チャップマン兄弟っぽい、ちょっと人体改造要素のある裸像や動物像が多い。女性の作家で、私はこんなに見ていてしっくりくる女体像を見たのは初めてだった。近代美術館でもそうしたテーマの展示があった通り、「ヌード」は男性視点から作られたもので、実際の女性裸像とはかけ離れている。それに対し、女性の皮膚感覚を表していて、遺伝子などのテーマに繋がるような現代性もある、全体的に凄いと思える上にしっくりくるという稀有な作品だった。
以下はジャンルのうち1つだけ
- 芝居
ブルーシート
見たのはもうはるか昔のことみたいに感じる。
ダンスクロッシング、「教室」、「201号室」と考えると飴屋さんの芝居を4本も見てる。
- マンガ
『華なるもの』
BL。いかにもそれっぽい作風で、「24年組の後継者」みたいに宣伝されている作品もあるけれど、このマンガみたいな作品こそ24年組スピリットだと思う。どこまでも寂しい人間が一人いて、いやおうなく性的なことに晒されて、絆を見つけながらも縋れなくて、寂しいまま死んでいく。これでデビュー作というのだから恐ろしい。
BL以外だと暗殺教室やハイキューなどジャンプが安定して面白い。「どぶがわ」「累」なども良かった。
- ドラマ
わざわざ書くまでもないけれど、2013年がどんな年だったかというと、半年間あまちゃんが放映されていた年だったので。4月1日、今日から新年度かとちょっとの憂鬱と緊張の中、朝の用意をしながらNHKをつけっ放しにしていたらいつの間にか釘付けになった。朝ドラを見てから出勤できない距離にはもう住めない。
- アニメ
2013年がどんな年だったかというと、4ヶ月間Freeがry)
勢いあまって中二病も氷菓も境界も見た。脚本に色々不満もあるけれど、基本的にはアニメすごい、と圧倒される。絵が上手くて演出が繊細で、キャラクターのことが第一に考えられている。